【動くシミュレータ付】自己保持回路とは?(応用編)実務で役立つ使い方を初心者向けにやさしく解説

自己保持回路とは(応用編)の解説イメージ。シーケンス制御で使用される押しボタンと電磁リレーの自己保持回路を表現した図。

こんにちは。三刀流エンジニアです。

私はこれまで20年以上にわたり、工場の生産設備設計・生産技術の仕事に携わってきました。

機械設計・電気設計・PLC(シーケンス制御)設計の経験を活かし、このレッスンでは初心者の方にも分かりやすく解説していきます。

前回の「自己保持回路とは?(基礎編)」では、

  • 自己保持回路の基本動作
  • リレーを使った実態配線図
  • ラダー図への変換方法

について学習しました。

今回は応用編として、

  • ラダー図での動作確認
  • 自己保持回路が必要な理由
  • 実際の工場設備での使用例
  • ランプ(表示灯)を組み合わせた実務回路

について学んでいきます。

さらに今回も、メカトロラボ名物の**「動く!体験型シミュレータ」**を用意しました。

シミュレータを触りながら学習することで、教科書だけでは分かりにくい回路の動きを直感的に理解できます。

レッスンの最後には振り返り練習問題も用意していますので、ぜひチャレンジしてみてください。

三刀流エンジニア

メカトロラボのレッスンでは、単に文章を読むだけではなく、「動かして理解すること」を大切にしています。
ぜひ実際にシミュレータを操作しながら学習を進めてみてください。
それでは始めていきましょう。

※基礎編をまだ読んでいない方は、先にこちらからご覧ください。


目次

自己保持回路とは?(応用編)の要点【3行まとめ】

  • 自己保持回路は、一度スタートするとボタンを離しても動作を継続できる回路です。
  • 停電復帰時に勝手に機械が動き出さないため、安全性の確保にも役立ちます。
  • 工場の設備やPLC制御で広く使われている超重要回路です。

このレッスンで学べること

ラダー図で自己保持回路がどのように動くのか

自己保持回路が必要な理由

停電時の安全性との関係

実際の設備での活用例

ランプ(表示灯)制御の基本


前回の基礎編をおさらいしよう

前回のレッスンでは、自己保持回路の基本的な仕組みを学びました。

自己保持回路とは、起動ボタンを一瞬押すだけで運転を継続できる回路です。

まずは簡単に復習してみましょう。

自己保持回路の実態配線図とラダー図の比較図。PB1、PB2、リレーY1を使用した回路をPLCのラダー図へ変換した例を示している。

起動ボタンを押すとリレーコイルがONになります。

すると、リレー自身のa接点(NO)が閉じて新しい電気の通り道ができます。

そのため、起動ボタンを離しても電流が流れ続け、運転状態を維持できます

これが自己保持回路の基本原理でした。


三刀流エンジニア

基礎編では「なぜボタンを離しても動き続けるのか?」を学習しました。
今回はその知識を使って、実際の設備ではどのように使われているのかを見ていきましょう。


動く!ラダー図自己保持回路シミュレータ

それでは実際にラダー図を動かしてみましょう。

今回のシミュレータには、

  • X1(起動ボタン)
  • X2(停止ボタン)
  • Y1(リレーコイル)
  • Y1(自己保持接点)

が登場します。

動く!体験型シミュレータ|自己保持回路
Y1
Ready

まずは触ってみよう

次の順番で操作してみてください。

  •  X1(起動ボタン)を押す
  •  X1を離す
  •  X2(停止ボタン)を押す

ラダー図のどこが緑色に光るのかを観察しながら試してみましょう。


X1(起動ボタン)を押した瞬間

X1(起動ボタン)を押すとa接点が閉じます。

すると電気が流れ、Y1コイルがONになります。

Y1コイルがONになると、Y1の自己保持接点も閉じます。

これで自己保持回路が成立します。


X1(起動ボタン)を離したあと

起動ボタンを離しても運転は継続します。

なぜなら、Y1の自己保持接点が新しい電気の通り道になっているからです。

そのため、起動ボタンを押し続ける必要はありません。


X2(停止ボタン)を押した瞬間

X2(停止ボタン)はb接点です。

押すと接点が開きます。

すると回路が途中で切断されます。

Y1コイルへの電気供給が止まり、自己保持が解除されます。

結果として設備は停止状態になります。


三刀流エンジニア

ラダー図を見るときは、「左から右へ電気が流れている」と考えると理解しやすくなります。
まずは電気の通り道を追いかける練習をしてみましょう。


なぜ自己保持回路が必要なのか?

ここからは、実際の設備で自己保持回路が使われる理由を見ていきましょう。

単に「便利だから」だけではありません。

実は、安全性の確保にも大きく関係しています。


理由① ボタンを押し続けなくてよい

もし自己保持回路がなかったらどうなるでしょうか。

例えばコンベヤを動かしたい場合、

運転中ずっと起動ボタンを押し続けなければなりません。

これでは作業になりませんよね。

排気ファンやポンプなども同じです。

一度スタートしたら、停止ボタンを押すまで動き続けてほしい設備がほとんどです。

そのため、自己保持回路が使われています。


理由② 停電復帰時に勝手に動き出さない

これは工場設備において非常に重要なポイントです。

例えばオルタネートスイッチ(押すたびにON/OFFが切り替わるスイッチ)だけで設備を運転していた場合を考えてみましょう。

設備運転中に停電が発生したとします。

そして数分後に電気が復旧したとき、設備が勝手に再起動してしまう可能性があります。

もし作業者が設備内部で点検していたら、大事故につながる危険があります。

一方、自己保持回路は停電した瞬間にリレーがOFFになります。

そのため、電気が復旧しても設備は停止状態のままです。

再び運転するには、作業者がスタートボタンを押さなければなりません。

つまり自己保持回路は、

「勝手に動かないための安全回路」

でもあるのです。


三刀流エンジニア

工場では「動くこと」よりも、「勝手に動かないこと」の方が重要な場合があります。
自己保持回路は安全を支える基本回路の一つです。


理由③ 非常停止や安全条件を組み込みやすい

実際の設備では、ただ運転できれば良いわけではありません。

例えば、

  • 非常停止ボタン
  • 安全ドアスイッチ
  • セーフティセンサ

など、安全装置を組み合わせて使用します。

これらの接点を自己保持回路の停止側に直列接続すると、どれか一つでも異常が発生した時点で自己保持が解除されます。

その結果、設備を確実に停止させることができます。

この仕組みは、工場設備の安全設計における基本的な考え方です。


三刀流エンジニア

現場では、この考え方を発展させた「インターロック回路」が数多く使われています。
インターロックについては今後のレッスンで詳しく解説しますので、今回は「安全条件を追加しやすい回路なんだな」くらいに覚えておけば大丈夫です。


PLCでも考え方は同じ

自己保持回路はリレー回路だけの話ではありません。

実はPLCのラダー図でも、まったく同じ考え方が使われています。

そのため、今学習している内容は将来PLCプログラムを学ぶときの土台になります。

シーケンス制御を学ぶなら、自己保持回路は必ず理解しておきたい基本回路です。

自己保持回路はこんなところで使われています

ここまで自己保持回路の仕組みや必要性を学んできました。

では実際に、どのような設備で使われているのでしょうか。

実は自己保持回路は、工場で使用される設備のあらゆる場所に登場します。


コンベヤ

工場で稼働するベルトコンベヤ

最も分かりやすい例がコンベヤです。

起動ボタンを押すとコンベヤが動き始めます。

そして停止ボタンを押すまで運転を継続します。

もし自己保持回路がなければ、作業者はずっと起動ボタンを押し続けなければなりません。


排気ファン

工場の排気ファンのイメージ

工場の排気設備や集塵機なども同じです。

一度運転を開始したら、停止指令が出るまで連続運転します。

そのため自己保持回路がよく使われています。


ポンプ設備

工場のポンプのイメージ

給水設備や冷却設備のポンプにも自己保持回路が利用されています。

運転開始後は継続して動作し、停止条件が成立したときに停止します。


工作機械

工場の工作機械のイメージ

工作機械や自動機でも自己保持回路は頻繁に登場します。

起動ボタンで運転を開始し、停止ボタンや非常停止ボタンによって停止します。


三刀流エンジニア

私がこれまで設計してきた設備でも、自己保持回路はほぼ必ず登場しました。
設備の種類が変わっても、基本的な考え方は共通しています。


ランプ付き自己保持回路を作ってみよう

ここからは、実務でよく使われる表示灯付きの自己保持回路を見ていきましょう。


なぜ表示灯が必要なの?

シーケンス制御で使われる運転・停止の表示灯(ランプ)

工場では設備の状態を周囲に分かりやすく伝える必要があります。

例えば、

  • 設備は停止しているのか
  • 設備は運転しているのか
  • 設備に異常が発生しているのか

といった情報です。

設備の状態が分からないと、作業者が誤って設備に近づいてしまう危険があります。

そこで使用されるのが表示灯(ランプ)です。


ランプ付き自己保持回路シミュレータ

それでは実際に動きを確認してみましょう。

動く!体験型シミュレータ|自己保持の応用(ランプ制御)
Y2
🔴 停止中
Y3
🟢 運転中

今回のシミュレータでは、

  • Y2:赤ランプ
  • Y3:緑ランプ

を追加しています。

まずは実際に操作して、ランプの切り替わりを観察してみてください。


停止中の状態

設備が停止しているときは、

赤ランプが点灯

しています。

一方で、

緑ランプは消灯

しています。

これは「設備は現在停止中ですよ」という状態表示です。


運転中の状態

X1(起動ボタン)を押して自己保持が成立すると、

緑ランプが点灯

します。

同時に、

赤ランプは消灯

します。

これにより、設備が運転中であることを周囲へ知らせることができます。


ラダー図を読んでみよう

なぜこのような切り替えができるのでしょうか。

ポイントはY1の接点です。

緑ランプ側

緑ランプはY1のa接点を利用しています。

Y1がONになるとa接点が閉じるため、緑ランプが点灯します。


赤ランプ側

赤ランプはY1のb接点を利用しています。

Y1がOFFのときはb接点が閉じているため、赤ランプが点灯します。

反対にY1がONになるとb接点が開くため、赤ランプは消灯します。


つまり、

  • 停止中 → 赤点灯
  • 運転中 → 緑点灯

という切り替えが実現できるのです。


三刀流エンジニア

PLCでも同じ考え方で表示灯を制御します。
実際の設備では、さらに黄色ランプやブザーを追加して異常状態を知らせることもあります。


コラム:なぜ停止ボタンはb接点なの?

停止ボタンには通常、b接点が使用されます。

これは安全性を高めるためです。


もしa接点だったら?

停止ボタンにa接点を使っていたとします。

この状態で配線が断線した場合、停止ボタンを押しても設備が停止できなくなる可能性があります。

これは非常に危険です。


b接点なら安全側になる

一方、停止ボタンにb接点を使用している場合はどうでしょうか。

もし断線が発生すると、回路は開放状態になります。

その結果、設備は停止します。

つまり、

故障したときに安全側へ動作する

という特徴があります。


この考え方を

フェイルセーフ

と呼びます。

設備設計では非常に重要な考え方です。


b接点について詳しく知りたい方は、こちらのレッスンもぜひご覧ください。


レベルチェック問題

ここまで学習した内容を確認してみましょう。

分かったつもりでも、問題を解いてみると意外な発見があります。

ぜひ挑戦してみてください。

三刀流エンジニア

解答を見る前に、まずは自分で考えてみてください。
間違えても大丈夫です。
考える時間そのものが理解につながります。


レベル1:穴埋め問題

問題1

自己保持回路では、起動ボタンを(   )しても運転を継続できる。

解答・解説

解答:離しても

解説

自己保持回路では、一度リレーがONになると、自分自身の接点によって電気の通り道を維持できます。

そのため、起動ボタンを離しても運転を継続できます。


問題2

停止ボタンには通常(   )接点が使用される。

解答・解説

解答:b接点

解説

停止ボタンには安全性を高めるためにb接点が使用されます。

万が一、配線が断線した場合でも設備が停止するため、フェイルセーフの考え方に適しています。


問題3

運転中に点灯する表示灯は一般的に(   )ランプである。

解答・解説

解答:緑

解説

多くの設備では、

  • 緑:運転中
  • 赤:停止中

という表示が採用されています。

設備の状態を一目で判断できるようにするためです。


レベル2:〇✕問題

〇か✕かで解答してください。

問題4

自己保持回路は停電復帰後に自動で再起動する。

解答・解説

解答:✕

解説

停電が発生するとリレーがOFFになり、自己保持は解除されます。

そのため、電源が復旧しても設備は停止状態のままです。

再び運転するには、作業者が起動ボタンを押す必要があります。


問題5

自己保持回路はPLCでも使われる考え方である。

解答・解説

解答:〇

解説

自己保持回路はPLCラダー図でも非常によく使われます。

リレー回路で学んだ内容は、そのままPLC学習の基礎になります。


問題6

b接点は押すと接点が開く。

解答・解説

解答:〇

解説

b接点は通常時に閉じており、押すと開きます。

停止ボタンや非常停止ボタンなど、安全を重視する回路でよく利用されます。


レベル3:考えてみよう

問題7

設備運転中に停電が発生し、その後電源が復旧しました。

なぜ自己保持回路では自動的に再起動しないのでしょうか。

安全面も含めて考えてみましょう。

解答・解説

解答例

停電するとリレーがOFFになり、自己保持が解除されるためです。

もし自動的に再起動してしまうと、設備内部で点検や清掃をしている作業者が巻き込まれる危険があります。

そのため、自己保持回路は電源復旧後も停止状態を維持するようになっています。


問題8

設備が運転中なのに赤ランプが点灯したままだと、どのような問題が起こるでしょうか。

現場作業者の立場になって考えてみてください。

解答・解説

解答例

設備の状態を誤認する可能性があります。

例えば、作業者が「停止している」と勘違いして設備に近づいてしまうと、事故につながる危険があります。

表示灯は設備状態を正しく伝える重要な役割を持っています。

そのため、運転中は緑ランプ、停止中は赤ランプなど、状態に応じて適切に表示することが大切です。


まとめ

今回のレッスンでは、自己保持回路の応用的な使い方について学習しました。


今回のポイント

自己保持回路はボタンを押し続けなくても運転を継続できる

停電復帰時に勝手に動き出さないため安全性が高い

非常停止や安全条件を組み込みやすい

PLCでも同じ考え方が使われている

表示灯を利用することで設備状態を分かりやすく表示できる


三刀流エンジニア

自己保持回路は、シーケンス制御を学ぶうえで最も重要な基本回路の一つです。
この考え方を理解しておくことで、今後学習するPLCプログラムやラダー図も読みやすくなります。
ぜひシミュレータを何度も触って、回路の動きを自分のものにしてください。


次回レッスン予告

次回のレッスンでは、シーケンス制御の基本論理回路であるAND回路について学習します。

「複数の条件がそろったときだけ動作する」

という考え方は、実際の設備制御で非常によく使われます。

引き続き、一緒にシーケンス制御を学んでいきましょう。


シーケンス制御の基礎をもっと学びたい方へ

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