こんにちは。三刀流エンジニアです
私は工場の生産技術エンジニアとして20年以上、生産設備の設計・改善に携わってきました。
メカ・電気・ソフト(PLC)の三分野を経験してきたことから、メカトロラボでは「三刀流エンジニア」として活動しています。
このレッスンでは、工場で設備保全や生産技術に携わる方はもちろん、これからシーケンス制御やPLCを学びたい初心者の方にも分かりやすく解説していきます。
シーケンス制御を学び始めると、必ず登場するのが自己保持回路です。
しかし、
- 「ボタンを離したのに、なぜ動き続けるの?」
- 「ラダー図を見ると余計に分からなくなる…」
- 「PLCの勉強を始めたいけど、自己保持回路が理解できない」
と悩む方も多いのではないでしょうか。
特に初心者の方は、教科書の静止画だけでは電気の流れをイメージしにくく、ここでつまずいてしまうことがあります。
そこで今回のレッスンでは、メカトロラボ特製の**「動く!体験型シミュレータ」**を使いながら、自己保持回路の仕組みをやさしく解説します。
さらに後半では、
✅ 実態配線図からラダー図への変換方法
✅ PLCで使われるラダー図の基本ルール
✅ 振り返りレベルチェック問題(全10問)
も用意しています。
「動かして学ぶ → 理解する → 問題で確認する」
という流れで、自己保持回路をしっかり身につけていきましょう。
三刀流エンジニア私も最初は自己保持回路がなかなか理解できませんでした。
今回はシミュレータを使いながら、「なぜ自己保持できるのか?」をできるだけ直感的に理解できるよう解説していきます。
このレッスンを読む前に
このレッスンでは、リレーの基本的な動作を理解していることを前提に解説を進めます。
「リレーの中で何が起きているのか、まだ少し不安…」という方は、先にこちらのレッスンをご覧ください。


リレーの仕組みを理解しておくと、今回の自己保持回路がぐっと分かりやすくなります。
このレッスンで学べること
このレッスンを終える頃には、次のことが理解できるようになります。
- 自己保持回路の仕組み
- ボタンを離しても動き続ける理由
- リレー内部で起きていること
- ラダー図の基本的な見方
- PLCにつながる考え方の基礎
自己保持回路とは?
自己保持回路とは、
「一度ボタンを押すと、ボタンから手を離しても動作を続ける回路」
のことです。
例えば工場のコンベアを想像してみてください。
起動ボタンを押している間だけしか動かないと、ずっとボタンを押し続けなければなりません。
これでは作業になりませんよね。
そこで使われるのが自己保持回路です。
一度起動ボタンを押すと、その後は手を離しても運転を続け、停止ボタンを押したときだけ停止するようになります。
この仕組みは、電磁リレー回路だけでなく、PLCのラダープログラムでも非常によく使われます。
シーケンス制御の基本中の基本と言ってもよい重要な回路です。
【体験型】シミュレータで学ぶ自己保持回路の仕組み
今回のシミュレータは、
実際の部品や配線のつながり方をイメージしやすい「実態配線図(じったいはいせんず)」という形式で作成しています。
難しく考えず、「どこに電気が流れているのか」に注目しながら触ってみてください。
百聞は一見に如かずです。
まずはメカトロラボ特製の「動く!体験型シミュレータ」を体感しましょう。
ボタンを押したとき、離したとき、停止したときに何が起きるのかを観察してみてください。











まずは説明を読む前に自由に触ってみてください。
「ボタンを離しても動き続ける」という現象を体験することが大切です。
4つのステップで動きの流れを見てみよう
ここからはシミュレータの動きを、1ステップずつ詳しく見ていきます。
STEP1:初期状態


初期状態では、
- PB1(起動ボタン)は押されていない
- PB2(停止ボタン)は押されていない
- リレーコイルには電流が流れていない
- リレー接点(NO)も開いている
という状態です。
当然ながら、まだ回路は何も動作していません。
STEP2:PB1(起動ボタン)を押す


PB1を押すと、電源からリレーコイルへ電流が流れます。
するとリレー内部ではコイルが電磁石となり、可動鉄片を引き寄せます。
その結果、
リレー接点が閉じます。
つまり、
- コイルがONになる
- 接点が閉じる
という2つの変化が同時に起こります。



ここは前回の「リレーとは?」レッスンで学んだ内容ですね。
リレーはコイルの力で接点を動かす部品です。


STEP3:PB1を離す【ここが自己保持の核心!】


起動ボタンから手を離しました。
普通なら電流が止まりそうですが、実際にはリレーコイルへ電流が流れ続けています。
なぜでしょうか?
答えは、
先ほど閉じたリレー接点が、新しい電気の通り道になっているからです。
PB1を押したことで閉じたリレー接点を経由して、コイルへ電流が流れ続けます。
つまり、
自分自身の接点を使って、自分自身をONのまま維持している
という状態です。
これが自己保持回路です。



ここが自己保持回路で最も重要なポイントです。
「ボタンを離したのに動き続ける理由」が理解できれば、自己保持回路はほぼマスターしたと言っても大丈夫です。
STEP4:PB2(停止ボタン)を押す


PB2(停止ボタン)を押すと、コイルへ流れている電流が途中で遮断されます。
すると、
- コイルの磁力が消える
- リレー接点が元に戻る
- 自己保持回路が解除される
という流れになります。
最後は復帰バネの力によって、リレーは初期状態へ戻ります。
こうして回路は停止します。
もう一度シミュレータを触ってみよう
ここまで読んだら、もう一度シミュレータを操作してみてください。
先ほどよりも、
- どこに電流が流れているのか
- なぜ自己保持できるのか
- 停止ボタンがどんな役割を持つのか
が見えてくるはずです。











「自分の接点を使って自分をONにし続ける」
このイメージが持てれば、次のラダー図の理解も一気に楽になります。
実態配線図とは?
ここまで使ってきたシミュレータは、
実態配線図(じったいはいせんず)
という形式で回路を表現しています。


実態配線図とは、
実際の部品や配線のつながり方を、できるだけ実物に近い形で表現した図面
のことです。
今回のシミュレータにも、
- 電池(電源)
- 押しボタンスイッチ
- リレー
- 配線
などが、実物をイメージしやすい形で描かれています。
そのため、
「どこからどこへ電気が流れているのか」
を初心者でも直感的に理解しやすいというメリットがあります。
ただし、工場の設備やPLC設計では、実態配線図だけで回路を表現することはほとんどありません。
なぜなら、回路が複雑になると図面が大きくなり、理解しにくくなってしまうからです。
そこで現場で広く使われているのが、
ラダー図
です。
次は、PLCでも使用されるラダー図の基本ルールについて学んでいきましょう。



私も新人教育をするときは、いきなりラダー図を見せるのではなく、まず実態配線図で仕組みを説明することがよくあります。
実際の部品の動きをイメージしやすいので、初心者の方には特におすすめです。
ラダー図とは?
シミュレータで自己保持回路の動きを理解できたところで、今度はPLCでも使われるラダー図について学んでいきましょう。
実際の現場では、実態配線図だけで回路を表現することはほとんどありません。
シーケンス制御やPLC設計では、ラダー図という形式で回路を表現します。



実態配線図とラダー図は見た目が少し違います。
しかし「どの部品がどの記号になるのか」が分かれば、それほど難しくありません。
部品ごとのラダー図シンボル対応表
今回シミュレータで登場した部品は、ラダー図では次のように表現されます。


三菱電機製PLCでは、一般的にスイッチやセンサなどの入力機器を「Ⅹ」、
リレーやランプなどの出力機器を「Y」で表します。
例えば今回の回路では、
- PB1 → X1
- PB2 → X2
- リレー → Y1
のように表現できます。



PLCメーカーによって記号の付け方は異なりますが、「入力」と「出力」を区別する考え方は共通です。
まずは「X=入力」「Y=出力」と覚えておけば十分です。
ラダー図の基本ルール「電気は左から右へ流れる」
ラダー図には、最初に覚えておきたい大切なルールがあります。
それは、
「電気は左の母線から右の母線へ向かって流れる」
ということです。


左側には、
- 押しボタンスイッチ
- センサ
- リレー接点
などの条件を配置します。
そして条件が成立すると、右側にある
- リレーコイル
- ランプ
- PLC出力
などの出力が動作します。
まずは、
「左から右へ電気が流れる」
というルールだけ覚えておけば十分です。



PLCのラダー図を読むときも基本は同じです。
まずは電気の流れを左から右へ追いかけるクセを付けましょう。
実態配線図をラダー図を見比べてみよう


左が今回使用した実態配線図です。
右が同じ回路をラダー図で表現したものです。
部品の見た目は変わりますが、
電気の流れや動作の仕組みは同じです。



最初はラダー図が難しく感じるかもしれませんが、今回の自己保持回路と見比べながら読むと理解しやすくなります。
【レベルチェック】自己保持回路の練習問題(全10問)
ここまで学習した内容を確認してみましょう。
分かったつもりでも、問題を解いてみると意外な発見があります。
ぜひ挑戦してみてください。



解答を見る前に、まずは自分で考えてみてください。
間違えても大丈夫です。
考える時間そのものが理解につながります。
レベル1:穴埋め問題(5問)
問題1
一度ボタンを押すと手を離しても動作を続ける回路を( )と呼びます。
解答・解説
解答:自己保持回路
解説
自己保持回路とは、一度ONになると、その状態を維持する仕組みを持った回路です。
工場設備やPLCプログラムでも頻繁に使用される基本回路です。
問題2
自己保持回路では、リレーの( )を利用して自分自身をON状態に保ちます。
解答・解説
解答:接点
解説
起動ボタンを押してリレーが動作すると、自分自身の接点が閉じます。
その接点を通して電流を流し続けることで自己保持が成立します。
問題3
ラダー図では、電気は左から( )へ流れると考えます。
解答・解説
解答:右
解説
ラダー図を読むときの基本ルールです。
回路を見るときは、左から右へ順番に追いかけるクセを付けましょう。
問題4
PB2(停止ボタン)は通常( )接点を使用します。
解答・解説
解答:b
解説
停止ボタンには通常b接点を使用します。
これは安全性を高めるためで、実際の工場設備でも一般的な考え方です。
問題5
リレーの磁力がなくなると、( )によって元の状態へ戻ります。
解答・解説
解答:復帰バネ
解説
コイルの磁力がなくなると、内部の復帰バネが働いて接点を元の位置へ戻します。
レベル2:〇✕問題(4問)
〇か✕かで解答してください。
問題6
自己保持回路では、PB1を離した瞬間に必ずリレーはOFFになる。
解答・解説
解答:✕
解説
PB1を離しても、リレー接点を通して電流が流れ続けます。
そのためリレーはON状態を維持します。
これが自己保持回路の基本動作です。
問題7
ラダー図では出力機器は一般的に右側へ配置される。
解答・解説
解答:〇
解説
ラダー図では、左側に条件、右側に出力を配置するのが基本です。
リレーコイルやランプなどは右側へ配置されます。
問題8
停止ボタンにはa接点が必ず使用される。
解答・解説
解答:✕
解説
停止ボタンには通常b接点を使用します。
もし断線が発生しても安全側に停止できるためです。
問題9
自己保持回路はPLCでもよく使用される。
解答・解説
解答:〇
解説
自己保持回路はPLCプログラムの中でも最もよく使用される基本回路の一つです。
今後学ぶPLCラダーでも何度も登場します。
レベル3:考えてみよう(1問)
問題10
もし停止ボタン(PB2)をb接点ではなくa接点にしたら、回路はどのような動きになるでしょうか?
少し考えてみてください。
解答・解説
解答:
停止ボタンとして正常に機能しなくなる可能性があります。
解説
停止ボタンをa接点にすると、ボタンを押したときだけ電気が流れる回路になります。
その結果、本来停止したい場面で停止できなくなったり、断線時に異常を検出できなくなったりする可能性があります。
そのため実際の設備では、安全性を考慮して停止ボタンにはb接点が使用されるのが一般的です。
この考え方は、機械安全の世界で重要なフェイルセーフという考え方にもつながっています。
まとめ
今回は、自己保持回路の基礎について学びました。
今回のポイントを振り返ってみましょう。
- 自己保持回路は一度ONになると動作を継続する回路
- リレーの接点を利用して自分自身を保持している
- 停止ボタンを押すと自己保持が解除される
- ラダー図では電気は左から右へ流れる
- PLCでも自己保持回路は頻繁に使われる



自己保持回路はシーケンス制御とPLC学習の土台になる重要な回路です。
今回のシミュレータを何度か触りながら復習すると、より理解が深まりますよ。
次回レッスン予告
次回は、
【動くシミュレータ付】自己保持回路とは?(応用編)実務で役立つ使い方を初心者向けにやさしく解説
を予定しています。
次回は、
- 動くラダー図シミュレータ
- ランプ(表示灯)付き自己保持回路
- 実務で使われる回路例
- 停電復帰時の安全な考え方
などを学んでいきます。
自己保持回路を「理解する」だけでなく、
「実際に使えるレベル」
を目指していきましょう。
シーケンス制御の基礎をもっと学びたい方へ















