こんにちは。三刀流エンジニアです。
生産技術エンジニアとして20年以上、製造業の現場で機械・電気・シーケンス制御の3領域にまたがって働いてきました。機械保全技能士もその中で取得した資格のひとつです。
第二種電気工事士を取得して、電気の知識がついた。でも、こんな「もどかしさ」を感じたことはありませんか?
- 「電気のことはわかる。でも機械的なトラブルには手が出せない」
- 「電気担当と機械担当の間で、原因の押し付け合いになる場面がある」
- 「もっと設備全体を見渡せるエンジニアになりたい」
その「もどかしさ」を感じているなら、機械保全技能士はその壁を打ち破る鍵になります。
この記事では、電工二種×機械保全の掛け合わせが現場でどう効くのか、実体験をもとにお伝えします。

機械保全技能士とはどんな資格か

「機械設備を守る」技術を証明する国家資格
機械保全技能士は、工場の機械設備を正常な状態に維持・管理するための技能を証明する国家資格です。
設備が壊れてから直すのではなく、壊れる前に予兆を察知して対処する「予防保全」の考え方が核心にあります。ベアリング・歯車・シール・潤滑油など、機械設備を構成する要素の知識と、点検・診断・修理のスキルが問われます。
工場の生産ラインを止めないこと——これが機械保全の最大のミッションです。
試験の構成:学科と実技
試験は「学科試験」と「実技試験」の2つで構成されています。
- 学科試験:機械要素・潤滑・故障診断・安全に関する筆記試験
- 実技試験:軸受・歯車の損傷写真を見て原因を特定したり、潤滑油の銘柄判定やボルトの破断面から原因を特定するマークシート形式の試験
「実技」と名がついていますが、実際はマークシート形式の判定試験です。写真や図を見て、損傷の名称・原因・対処法を選択します。
難易度は学科より実技の方がやや高め。特に潤滑油の銘柄判定やボルトの破断面から原因を特定する問題は、知識の深さが試されます。
三刀流エンジニア実技試験の問題に悩み始めると、時計の秒針が心臓の鼓動より速く聞こえてくる感覚があります。「エンジニアは現場で迷ってはいけない」と自分に言い聞かせ、最後は直感を信じて回答しました。その姿勢が、現場でも試験でも正解を引き寄せます。
独学6ヶ月で合格できる
私の場合、勉強期間は約6ヶ月。完全独学で合格しました。
使ったのは以下の3冊です。この3冊に絞って繰り返し学習することで、合格に必要な知識を効率よく身につけられます。
- 「機械保全の徹底攻略 機械系・学科」(日本能率協会マネジメントセンター)
- 「機械保全の徹底攻略 機械系・実技」(日本能率協会マネジメントセンター)
- 「機械保全の過去問500+チャレンジ100」(日本能率協会マネジメントセンター)
電工二種で電気の基礎を学んでいる方であれば、学科の電気関連部分はスムーズに入れます。6ヶ月という期間は、働きながらでも十分に現実的なラインです。
「電工二種×機械保全」で何が変わるか【核心】
電気と機械が「頭の中で一本の線でつながる」
電工二種を取得したことで、電気回路・配線・法規の知識がついています。そこに機械保全の知識が加わると、電気回路と物理的な機構が頭の中で一本の線につながります。
「トラブルの原因はプログラムのせいか、それともベアリングの固着か」——その切り分けを、確信を持って自分でできるようになります。
これが、電工二種単体では到達できない境地です。
部署間の壁を越えた実体験【3つの現場エピソード】
電工二種×機械保全の掛け合わせが実際に現場でどう効いたか、具体的な場面でお伝えします。
エピソード①:コンベアの異常過熱——部署間の「押し付け合い」を終わらせた


コンベアから不規則な異音が発生し、モーターが異常過熱で停止するトラブルが起きました。電気担当は「過負荷だから機械の固着だ」と言い、機械担当は「モーター自体の故障だ」と譲らない。典型的な部署間の押し付け合いです。
私はまず、電工の知識でクランプメータを使って電流値を測定し、三相のバランスを確認。電気的な欠相がないことを証明した上で、機械保全の知識でチェーンのテンションとベアリングの聴診を行いました。
結果、減速機内部のオイル切れによる焼き付き寸前であることを突き止め、原因を100%特定。部署間の壁を越えて、最短で修理に導けました。
エピソード②:エアシリンダーの動作不良——「消去法」ではなく「確信」で直す
エアシリンダーの動きが鈍くなり、生産サイクルが遅延するトラブルが発生。多くの人は「電磁弁の故障」か「シリンダーの寿命」のどちらか一方で悩みます。
私は電工の知識でソレノイドへの通電状態(電圧)を確認しながら、機械保全の知識でスピードコントローラーの詰まりとピストンロッドの微かな傷をチェック。実際の原因は「配線の接触不良で電圧が不安定になり、電磁弁が中途半端に開閉していた」ことでした。
両方わかるからこそ、消去法ではなく確信を持って数分で解決できました。
エピソード③:新設備の最終確認——「電気的に合格」より「機械として動き続ける」配線
新しく導入する自動機の配線・配管の最終確認に入ったとき、業者が仕上げた配線を見て2点を指摘しました。
- 「この配線位置だと、稼働部の振動で被覆が擦れて数ヶ月で短絡する」
- 「グリスアップの際に手が届かず、結局配線を外すハメになる」
電気の図面通りに作るだけでなく、「機械として動き続けるための配線」を提案できたことで、将来の突発故障を未然に防ぎました。生産管理から絶大な信頼を得た瞬間でした。



「どちらもわかる」という存在は、現場で最も重宝され、信頼される存在です。電気担当でも機械担当でもなく、「設備全体を見渡せる人間」として呼ばれるようになったとき、エンジニアとしての自信が揺るぎないものになります。
機械保全技能士を取得して、職場でどう変わったか
「とりあえずグリスを塗る」から「原因を数値と理屈で返す」へ
取得前と取得後で、最も変わったのは「トラブル対応の質」です。
以前は、異音がするコンベアに対して「とりあえずグリスを塗る」という対症療法しかできませんでした。取得後は、振動の伝わり方や摩耗の進み具合から「ベアリングの予圧不足」や「シャフトの芯出し不良」を論理的に特定できるようになりました。
上司からは「お前が見ると原因が数値や理屈で返ってくるから、修理の判断がしやすい」と全幅の信頼を寄せられるようになりました。
「1万円で直せるものを100万円にしない」番人として評価された


日常点検で、わずかなボルトの緩みや油漏れのパターンから、将来的な重大故障を予見できるようになりました。
周囲が「まだ動いてるからいいじゃん」と言う中、「この摩耗の仕方は内部で偏荷重がかかっている証拠。今直せば1万円だが、壊れたら100万円かかる」と説得。
結果、ラインの突発停止が激減し、評価面談で「お前は工場の利益を守っている」と感謝されました。
転職で「一人二役」として年収が上振れした
設備のオーバーホール時に、電装系のリニューアルだけでなく機械的な消耗品の選定や公差のチェックまで一人でこなせるようになりました。
転職の場面では、「一人二役(電気・機械)ができる人材」として即戦力評価されました。面接で「電気的な制御の最適化と、機械的な寿命延長の両面からコストカットを提案できる」と伝えたところ、提示年収が想定より上振れしました。


機械保全の知識が「勘」を「確信」に変える
工場の現場には「昔からこうやっている」「なんとなく勘で直した」という経験則が溢れています。
機械保全技能士の学びは、それらをすべて「理論」で整理してくれます。
- なぜこのボルトは緩むのか?
- なぜこの油は汚れるのか?
- なぜここだけ摩耗が早いのか?
理由がわかれば、対策は自ずと決まります。
実技試験で苦労する「破断面の判定」や「油の銘柄判定」は、まさにその理論を叩き込むための試練です。試験勉強を通じて、現場の「なんとなく」が「確信」に変わっていきます。



「勘」を「確信」に変え、ロジカルに現場を改善していく。その知的でエキサイティングな経験が、この資格の先に待っています。工場従事者として長く活躍するために、「なぜ」を問い続ける姿勢が最大の武器になります。
機械保全技能士を目指す工場エンジニアへ
電気と機械の「もどかしさ」を感じているなら
電気のことはわかるけれど、機械的なトラブルには手が出せない。そんなもどかしさを感じているエンジニアに伝えたいことがあります。
機械保全の知識を得ることで、電気回路と物理的な機構が頭の中で一本の線につながります。
「プログラムのせいか、それともベアリングの固着か」——その切り分けを自分の確信を持って行えるようになったとき、あなたのエンジニアとしての自信は揺るぎないものになります。
「どちらもわかる」存在の価値
電気担当と機械担当がそれぞれの縄張りで動く工場では、その境界線上のトラブルが最も時間を食います。
その境界線を自分一人で越えられる存在が、現場で最も重宝され、最も信頼されるエンジニアです。
電工二種を持つあなたには、すでに電気の土台があります。機械保全の知識を加えることで、その土台は一気に広がります。
独学での合格に向けて、まず何から始めるか
テキスト2冊+過去問題集1冊に絞って繰り返す
勉強方法はシンプルです。以下のテキスト2冊で知識を深め、過去問を繰り返し解くことに集中してください。
- 「機械保全の徹底攻略 機械系・学科」で知識の基礎を固める
- 「機械保全の徹底攻略 機械系・実技」で写真判定問題に慣れる
- 「機械保全の過去問500+チャレンジ100」で過去問を繰り返し解く
特に実技は、写真を見て「これは疲労破断か、それとも過負荷破断か」を瞬時に判断する訓練が必要です。繰り返し問題に触れることで、判断のスピードと精度が上がります。
詳しい学習ロードマップは今後の記事で
科目別の攻略法・問題集の使い方・勉強スケジュールの立て方については、今後メカトロラボで詳しく解説していきます。
おわりに:「電気×機械」で、現場の最後の砦になる
電工二種を取得したあなたには、電気の知識という確かな土台があります。
その土台に機械保全の知識を積み上げることで、「電気も機械も両方わかるエンジニア」という希少な存在になれます。
部署間の壁を越え、原因を確信を持って特定し、工場の利益を守る番人として信頼される。その立場に立ったとき、エンジニアとしての自信は揺るぎないものになります。
「どちらもわかる」という強さを、ぜひ手に入れてください。
まとめ


- 機械保全技能士は「設備を守る技術」を証明する国家資格。独学6ヶ月で合格できる
- 実技はマークシート形式の判定試験。写真を見て損傷の原因・対処法を特定する
- 電工二種×機械保全で「電気と機械が頭の中で一本の線につながる」
- 部署間の押し付け合いを終わらせ、原因を確信を持って特定できるようになる
- 「1万円で直せるものを100万円にしない番人」として工場で信頼される
- 転職では「一人二役(電気・機械)」として即戦力評価され,年収の上振れにつながる
- 「勘」を「確信」に変える—理論で現場をロジカルに改善できるエンジニアになれる















